はじめに
テレビ番組や動画コンテンツは、私たちの生活に欠かせないエンターテインメントや情報源です。その裏側では、多くのスタッフが関わり、一つの作品を作り上げています。その中でも、番組制作の最前線に立ち、ディレクターをサポートしながら現場を支えるのが アシスタントディレクター(AD) です。
この記事では、ADの仕事内容を段階ごとに詳しく解説し、求められるスキルややりがい、さらにはADになるためのルートまで徹底的にご紹介します。「ADって何するの?」「テレビ業界に興味はあるけど、自分でもなれる?」という疑問に答える“保存版”の記事です。
アシスタントディレクター(AD)の役割とは?

アシスタントディレクター(AD)は、番組制作の現場でディレクターをサポートする仕事です。ディレクターは番組全体の指揮をする立場にありますが、一人で番組制作を進めることはできません。企画からリサーチ、撮影準備、収録、編集、放送まで、膨大なタスクがあります。その一つひとつを下支えし、現場を円滑に動かすのがADです。「何でも屋」と呼ばれることもありますが、言い換えれば 番組制作の全てを経験できる貴重なポジション と言えるでしょう。
ADの仕事内容を徹底解説
①企画段階
ADは「番組の土台づくり」に深く関わります。
- リサーチ: 番組のテーマに沿った情報収集を行います。ネット検索や資料読み込みだけでなく、実際に専門家へ取材することも。番組の説得力を支える重要な仕事です。
- 会議参加: ディレクターやプロデューサーと共に会議に出席。アイデア出しをすることもあり、意見が採用されることもあります。
- ロケハン: 撮影場所を探し、許可取得などの手続きを行います。
②準備段階
企画が固まれば「制作が動き出す段階」です。
- スケジュール作成: 撮影・編集の進行表を作ります。出演者の都合やスタジオ使用時間、天候なども考慮する必要があります。
- 機材・美術品の手配: カメラ、照明、マイク、小道具などを準備。場合によってはレンタル会社とやり取りも。
- 出演者調整: 取材対象者のスケジュールを調整し、出演依頼や連絡を行います。
③収録段階
制作の中心となる「現場業務」です。
- 現場準備: 小道具の設営、椅子やマイクの配置などを行います。
- 演出補助: ケータリング、台本、楽屋のセッティングなどを行います。
- サポート: 収録中のトラブルに素早く対応します。
④編集段階
収録が終われば「仕上げの作業」に移ります。
- 素材整理: 収録した映像や音声を分類し、編集者が作業しやすいように管理します。
- 編集補助:ディレクターの指示に従い、カット編集やテロップ挿入を手伝います。
⑤その他の雑務
- 会議の議事録
- 備品購入
- 交通費精算
- 視聴率報告
ADは、まさに「番組が完成するまでのあらゆる裏方仕事」を担っています。
ADになるための3つの方法

ADになる方法は、大きく分けて以下の3つがあります。
①テレビ制作会社に就職してADになる
こんな人におすすめ
-
- 長期で同じ番組に携わることができる
- ジャンルに特化し、強みを作りたい
メリット
-
- 契約期間に縛られないため裁量が増えやすく、演出補助→進行→ディレクションへ成長しやすい
- 番組のノウハウが蓄積し、品質改善・提案が通りやすい
- キャリア(D/P/編集等)が描きやすい
デメリット
-
- 番組や業務内容を自分で選べないことがある
- 長期的に同じ番組に所属するので、他番組に異動が難しい
- クオリティや進行の責任も背負う場合もある
②派遣会社経由でADになる
こんな人におすすめ
-
- 早く現場に出たい/多ジャンルを回って適性を探したい
- 新しい現場に飛び込む機動力がある
メリット
-
- 常に新環境で新鮮な刺激を得られる
- 向いているジャンルを見極められる
- 幅広い映像制作経験を積める
デメリット
-
- 現場ごとに文化が違い、順応力が求められる
- 育成や教育は会社・案件次第
③テレビ局に就職してADになる
こんな人におすすめ
-
- 大規模スタジオ・報道・スポーツなど多領域で経験を積みたい
- 設備・研修・ネットワークが整った環境で長期成長したい
メリット
-
- 研修・設備・アーカイブ・制作ネットワークが充実
- 番組数・部署が多く、異動や挑戦の機会が豊富
- 社会的影響の大きい企画・大型特番に関わりやすい
デメリット
-
- 新卒は競争率が高い/中途の募集は限定的
- 配属部署が希望と異なる可能性がある
ADとして働く場合必ずしも学歴が全てではない理由

制作会社・派遣会社で働く場合、学歴は必ずしも必要ではありません。その理由はADとして働く場合に求められるのは「コミュニケーション能力」「臨機応変な対応力」「体力」「熱意」と言えるからです。
- 未経験でもOK: 未経験から AD の仕事にチャレンジできるチャンスがあります。
- コミュニケーション能力:学歴よりも経験やスキル、そしてやる気を重視する求人が多くあります。
- 臨機応変な対応力:「思わぬトラブルにも折れない気持ちの強さ」が評価されるポイント。
- 体力:長時間のロケや、重量の機材・荷物を持つこともある。
- 熱意:「良い番組・良い映像を作りたい」という気持ち。
アシスタントディレクターのとある一日
| 時間 | 業務 | 内容 |
|---|---|---|
| 10:00 | 出社 | 出社後、まずはメールをチェック。 午前中に使う企画会議の資料をまとめます。 担当番組の資料作りや印刷などを行います。 |
| 11:00 | 会議 | 担当番組の企画会議に参加します。 ディレクターやプロデューサーからの 指示を聞きながら番組全体の構成を把握します。 |
| 12:00 | ランチタイム | 作業の合間に昼食をとります。 |
| 13:00 | ロケ企画リサーチ | 番組のロケ企画に関するリサーチを行います。 電話・メール・ネットを使い取材や交渉をします。 |
| 16:00 | 取材予定先との連絡 | ロケで取材に行く段取りを行います。 取材先の相手先とやり取りをしながら、 取材したい内容、取材時間、必要な資料など、 取材の詳細を明確に伝え、事前にアポイントメントを取ります。 |
| 18:00 | 編集後のプレビュー | 番組の完成版に近い状態の映像を、 制作に関わったAD、ディレクター、プロデューサー、 放送作家や総合演出と鑑賞し、最終的な確認や調整を行います。 |
| 20:00 | 打ち合わせ | プレビューが終わったら、どの部分を修正するのかを ディレクターから聞き、修正のために必要な追加の ロケや映像素材があれば段取りを行います。 |
| 22:00 | 勤務終了 |
ADとして個人の能力を武器に変える方法

段取り力・コミュニケーションを武器にする
活かし方
- 先回りして関係者に情報共有する
- 資料・スケジュール・香盤表などの正確性を徹底する
- “雰囲気の良い現場”を自分が作る意識を持つ
武器化のポイント
- 「これだけ見れば今日の流れが全部わかる」という資料を作る
- 伝達は「誰に」「いつ」「どの順序で」が命
体力・行動力を武器にする(現場力)
活かし方
- 道具の準備・撤収を素早く行う
- ロケ時の移動、天気対応、機材トラブルなど臨機応変に動く
武器化のポイント
- 「言われる前に行動」できる人は制作チームから指名されやすく、仕事が途切れない
クリエイティブ感覚(デザイン / 企画 / 編集)を武器にする
活かし方
- 美術品の提案
- プレゼン資料や絵コンテの見やすさ向上
- 仮編集・テロップ作り
武器化のポイント
- 簡単な撮影・編集ができるAD は圧倒的に強い
- ディレクターの「こうしたい」を形にするスピードで差がつく
観察力を武器にする
活かし方
- カメラマンやディレクターが何を求めているかを察する
- 現場の不満・ズレを早期に拾って潰す
武器化のポイント
- “空気を読む”ことは技術
- 人の癖・性格・意図をノート化すると予測力が一気に伸びる
専門知識(語学・地域情報・ITなど)を武器にする
活かし方
- 英語/中国語/その他外国語 → 海外案件・インバウンド案件
- 地理・地域ネタ → ロケ地探しで重宝
- データ管理・IT → 配信・デジタル系案件
ADの仕事の「難しさ」と「やりがい」

労働時間
プラス面
・業務が落ち着いている時は、自由に時間を活用できる
・平日に休みが取れる
マイナス面
・撮影現場は早朝・深夜・場合によっては徹夜進行もあり、生活リズムが安定しにくい
・土日祝も動くことがある
業務範囲
プラス面
・業務の幅が広く問題解決力が向上し、マルチタスクが得意になる
・制作全体を学び、キャリア選択肢が広がる
マイナス面
・企画準備、ロケハン、資料作成、機材の手配、出演者対応、当日の進行管理など、担当領域がとにかく広い
・「何でも屋」になりがちで、作業の終わりが見えないことがある
現場対応
プラス面
・即断即決力が鍛えられ、危機管理能力が向上する
・高度な調整力を習得し、人脈・信頼関係を築くことができる
マイナス面
・予定通り進まない時に瞬時の判断が必要
・出演者・スタッフ・クライアントなど、多くの立場の人を同時に気遣うことが必要
プレッシャー
プラス面
・高い緊張下で集中力が磨かれ、正確性が向上する
・責任感が養成され、プロ意識と自信につながる
マイナス面
・情報整理や進行の正確さが求められ、ミスが現場全体に影響することもある
・「段取り」や「確認」が命なため、精神的に張りつめる場面もある
体力
・重い機材の運搬や長時間の立ち仕事、外ロケの移動など、肉体的にもハードな場面がある
まとめ

テレビ業界は“未経験OK”の採用が多い世界です。
制作会社や放送局の求人に応募し、採用後に現場へ配属されるのが一般的な流れで、映像系の専門学校や大学でなくても問題ありません。
志望理由では、「なぜテレビをやりたいのか」「どんな番組が好きか」「自分の強みと結びつけて話せるか」が大切です。
ADは番組制作の一番近くで動き、収録の準備から撮影、編集まで、あらゆる場面に関わります。
忙しい職種として知られていますが、その分、成長のスピードも早く、クリエイティブな現場で働ける魅力があります。「番組づくりに関わりたい」「テレビの世界で経験を積みたい」という思いがある人にとって、“テレビの面白さを最前線で味わえる仕事”でもあります。